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医療技術や手術器具の進歩により、人工関節はポピュラーな治療手段となりました。
術前の関節や骨の状況を把握し、さまざまな検査結果から、手術法を選択します。
壊れた関節を人工関節に置き換えるため、骨の中に人工の土台を埋め込み、正確な位置に適切な角度で設置します。その土台の内側に動く面、いわゆる磨耗する素材を設置するわけです。
そうすることで痛みが取れ、以前より関節はよく動き、筋力も増します。
年齢、変形の進行速度や、痛い関節をかばうことによって身体の他の部位に支障が出てこないかなどを考慮し、手術の時期を決定することも肝要。最終目標は人工関節が長く使用でき、QOL(生活の質)、いわゆる正常人の機能レベルまで向上させることです。
※関節そのものをよく知ることが大切
一般に関節は35歳ぐらいから老化が始まり、問題があれば加齢により悪化することは言うまでもありません。
年齢や状況を考慮し、うまく使うことをお勧めします。
体重をかけずに動かすことで関節液を循環させ、ストレッチによって筋の血流改善にも努めます。
身体の状況に合った適切な時間をかけ正しいフォームで歩く、あるいは足踏みなどを組み合わせます。
関節変形が進んで手術が必要になった方は、思うように動けませんので、特別なエクササイズが必要です。
但し、術前エクササイズされた方は、やはり手術後の回復が早く、同年齢の正常機能レベルまで到達しやすいです。
※入れ替え手術には経験と技術が求められる
人工関節の手術の多くは、臼蓋形成不全(股関節の屋根の部分が未発達な意)や関節軟骨が消失してくる一次性変形性股関節症などによる股関節の適応が最も多く、最終的変形(末期関節症)にて手術となります。
人工関節にも寿命があり、摩耗、緩み、破損などで入れ替える時は必ずやってきます。
摩耗だけなら、部分的に入れ替えるので、軽い手術ですが、緩み、破損などで土台を替えるとなると、骨の大量移植や、金属の外枠補強などの高い技術と経験が求められます。
そのため、医師には人工関節の結末を理解し、どのように技術的に改善すべきかを考慮した上で初回手術をすることが大切なのです。医師や病院を選択する上で、長持ちした人工関節長期成績例を経験しているかという点や、さまざまな状況での再置換術(入れ替え手術)の治療ができるかをしっかりと見極めることをお勧めします。
人工股関節の手術は、股関節の手術の一手段であり、すべてに対応できるものではありません。
変形した関節をあきらめ、新しい関節を造るしか方法のない末期関節症のみ適応となります。
但し、高齢で、このまま変形が進行する事がはっきりしている場合は、今後の筋力や体のバランス能力が低下する事を考慮し、早めに、手術に踏み切る場合があります。
末期関節症の状態は、本人がつらい痛みや動きの悪い関節に苦しんでいますが、他から見ると、その状態がわかり難いものです。
しかも、次第に悪くなるものですから、本人も何とか適応しようとして時間が経つため、体の他の部位を悪くしているのも気付きません。(例えば、股関節の動きを補うため悪くなる腰椎の変形:腰-股関節症候群や反対側の膝の変形の進行など)
特に、両側の末期股関節症のまま、長い期間放置された状況の患者さんによく見られます。
膝が痛くて、歩行がうまくできない。階段の上がり,降りがつらいなどの症状があり、膝に何度も、水(関節内水腫)が溜まる。また、病院でX線撮影の結果、高度な変形(末期)が認められた場合に、人工膝関節の手術が行われます。
手術の一番の目的は、痛みの除去です。
歩行、階段昇降や、しゃがみこみ、立ち上がりなど日常生活が楽になります。
筋力増強訓練により、以前より踏ん張ることができて、転倒しにくくなります。
但し、転倒防止に際しては、筋力訓練以外に、立位のバランス訓練も必要です。
下肢の軸が正常となり、足関節や足への荷重が改善されます。
また、リハビリ次第では、正座も可能となります。
術後のリハビリテーションが適切になされていれば、体の機能は改善されていきます。
入院は2から3週ですが、術後6カ月以上連続してリハビリテーションを行うと筋力が失われにくくなるため、退院後のエクササイズは重要です。
ただし、これらを自宅で行うとなると、なかなか困難です。
そこで、リハビリテーション指導士らとともに、本来人間が持っている体の機能を生かす『メディカル・リハ・フィット』という、運動療法の指導にも力を入れています。
骨・関節研究会 理事長 大久保俊彦
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